リトルクリエイティブセンターのこと


リトルクリエイティブセンターというのは、岐阜のまちとデザインを通してつながっている、小さなデザイン事務所です。いえ、もう3人で始めた事務所は現在、何人ものスタッフを抱えているので、小さな、ではないかもしれません。

 

このデザイン事務所を始めた3人というのが、今尾真也さん、石黒公平さん、横山七絵さんです

3人は柳ケ瀬にある古いビルを改修した、とにかく個性的な住人たちが集まるアトリエビル「やながせ倉庫」に学生時代に入居して、それから紆余曲折、とにかくいろんなことを経て、今の「リトルクリエイティブセンター」へと成長を遂げたわけですが、そんな3人へのインタビューは、もちろん一筋縄ではいかず、まずは学生時代からのざっくりとした年表を作ってもらうことから、取材は始まったのでした。

 

年表に基づきながら、和やか、オフレコまじりの会話が続いた2時間余りのインタビューは、当初の文字起こしが約28500文字に及びましたところが実際に掲載できたのは5100文字ほど。実に約5分の4削ったわけですが、はたしてどの会話を残して、どの話を削るべきなのか…。削っては少し戻し、やはり大幅に削って、さらに削った部分のダイジェスト的なまとめの文章を入れて…と模索が続きました。

 

ただ、最初はやながせ倉庫の中で何度も移転を繰り返し、まるでプロの大工並みにやながせ倉庫の改装を続けていた彼らの可笑しくも微笑ましいエピソードの数々も面白くて、そのあたりも随分残していたのですが、いつしか、彼らの根底にはあくまでも「デザイン」があるということが、とても大切なことのように思えて、最終的には、そちらに重点を置いたインタビューのまとめとなりました。

中でも、個人的にとても印象深かったのは、「Edit GIFU」のほぼ全ページのデザインを一緒に作り上げてくれた石黒くんの、“それ以上でも、それ以下でもない”という言葉でした。

 

私たちをとりまくたくさんのデザインの中には、たとえば、10のものがデザインによって過大に装飾されて20にも、100にも見えるようにプロモートされることがあります。逆に、10のものがその10分の1100分の1にしか良さが見えなかったり、あるいは全くその魅力が伝えられていないものもあります。

 

「迷うときは表現したいものの、それ以上でもそれ以下でもないようにしようと思っていて」。「過剰に良く見せるとか、低く見えるようなものではなくて、ここだなっていうところに置くようにしたい」。「かっこいいんだけど、かっこよすぎたら何か考えたほうがいいって思うし」。そんな石黒くんの言葉には、とても穏やかだけれど、確かな、誠実さがありました。

 

ともすると情報が過多になり、インパクトのあるデザインや過剰な表現で何かをバグらせたり、流行を生み出したりすることが注目されがちな時代なのかもしれません。そして、そんな時代を生きているからこそ、デザインや情報の発信力は重要です。けれども、そもそも10のものが、1でもなく、ましてや100でもなく、ちゃんと10のものとして伝えられたら、それは一番、「伝えたい人に、伝えたいことが届く」ということではないのか、と私は思うのです。

 

デザインも、あるいは私が紡ぐ言葉も。誰かのもとへ、それ以上でもそれ以下でもなく、きちんと届いてくれたら。そんな思いをもって綴った「Edit GIFU」のデザインを、リトルクリエイティブセンターの石黒くんにお願いできたことは、これもまたとても幸せなことだったのだと、つくづく思っています。


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