フラマンと純子さんと小さな家出娘

 

岐阜市長良にある雑貨屋「フラマン」さん。

フラマンとはフランス語でフラミンゴのこと。そのフラミンゴがデザインされた看板と、岐阜在住のアーティストのタンゲサチエさんが描いた、なんとものびやかなイラストの「顔ハメパネル」がこのお店の目印です。

 

フラマンを営む高橋純子さんは、ほんとうに可愛らしい人で、いつも作家さんのことやフェアトレードのこと、自分や家族のこと、そのときに感じていることなどを、とりとめなく話してくれるのですが、その表情がいかにも嬉しそうだったり、楽しそうだったり、愛しそうだったりして、そんな純子さんの笑顔を見るたびにキュンとしてしまって、「あ、これは私が男の子だったら、今、完全に恋に落ちちゃったな」なんて思ったりするような(笑)、とっても素敵な女性です。

 

 

Edit GIFUを作ると決めたとき、私は迷うことなく、フラマンさんのことも紹介したいと思いました。そこで早速、お店ができるまでや商品のこと、いろんな話を純子さんに聞かせてもらったのですが、ページができるまでには思ったよりも長い時間がかかり、その間に最初にイメージしていたページとはまったく別のページができあがるという、本当に思いもよらない展開が待ち受けていたのでした。

 

 


彼女への取材の中で印象的だったのは、小さな家出娘ちゃんのことでした。

それは、近所に住む小学生の女の子が、学校が終わるとこっそりと小さな家出を繰り返し、フラマンへとやって来るというお話でした。

 

ちょっぴりおませなその女の子は、学校から帰ると家出と称してフラマンにやって来て、「私もこんな雑貨屋さんをやってみたいな」とか、「おかあさんには家出のことは内緒よ!」とかいいながら、純子さんにいろんな話をするのだそうです。

(ここだけの話、純子さんはちゃんとそのお母さんに、こっそりお店に娘さんが来ていることをお伝えしていました。そして、彼女はちゃんと夕ご飯までにはおうちに帰っていたのです)

 

「さっきまで、ちょうどあのフィッティングルームに彼女が隠れてたの」と、いたずらの共犯者のように楽しそうに笑う純子さんの話を聞いて、なんだか、私まで楽しくなりました。

それは、私が小学生の頃に、姉や近所の幼なじみとままごと遊びをしたり、一人で西日の当たる小さな寝室にこもって本を読んではあれこれと空想をしたり、縁側でこっそり母の鏡台の前に座って口紅を塗ってみたりした、そんな懐かしいあの頃と、家出娘ちゃんの世界が、どこかでふっと、リンクしたからかもしれません。

 

小さな家出娘が、安心して居られる場所がある。

大人たちが、片方目をつぶりながら、実はちゃんと見守っている。

 

それは、このなんとも忙しくて、世知辛くて、猥雑な世の中にとって、どれほど優しくて大切なことだろう。そんな思いがふと浮かび、そんな場所があることが、純子さんが営むフラマンという場所が、まるで懐の深いゆったりとした居心地のよい家のようで、私自身をも温かく優しく迎えてくれているような気がしたのでした。

 

 

Edit GIFUでは、最終的に、私が旅した地で出会った人々のこととフラマンのこと、一見して全く結びつかないようなつのお話をひとつの物語のように書くということを試みて、言葉を紡ぐことになりました。

 

だから、フラマンさんのページで書いてみたいなと思っていた小さな家出娘のお話は残念ながら書くことができなかったのですが、こっそりと、ここに記しておきます。

 


TOP